
前ブログ “ついに点検報告書内の印鑑が省略されます!” について多くの方から反響を頂いているのですが、それと時を同じくして業界内で動きが見られるテーマがあります。
それは消火器の “機能点検” についてです。
兼ねてより『📞:消火器の機能点検って、どうやってます~?』等と勤務中であるにも関わらず何のメリットもない電話対応を何度かしたことがある程、実は問題になるテーマでした。
またとない機会であり、主になって動かれている有志の方より支援の依頼もありましたから、精一杯書かせて頂く事とします。✎
①“機能点検”って…?

消防用設備点検時に行われる消火器の定期点検には以下の2つのものがあります。
- 外観点検(毎回、目視によるもの)
- 機能点検(製造年から3年経過した加圧式・5年経過した蓄圧式、分解を要する)
ここで問題になってくるのが “蓄圧式” を分解する事による機能点検です。🔧
加圧式はフタを開けてもまた元に戻せますが、蓄圧式は空気を再充填しなければならず、現地での作業が困難な為、点検費が高額になり新品と取り換えた方が割安になるという事態が発生しているのが業界の現状です。
②何故そんなルールができたか

老朽化した消火器の破裂事故など、メンテナンス不足と結論付けられることが起こったことで法改正が行われるタイミングがありました。
その際に『消火器は点検時に分解して中まで見た方が良い!』という当たり前の意見があったことで加圧式消火器の機能点検というルールが追加されたのですが、その際にメンテナンスの費用が取れるという事で我々のような消防用設備業者が大きく声をあげたというのも背景にあったようです。
この時点で機能点検がオーバーメンテ云々はさておき、今やコレが仇となりました。
③蓄圧式への移行という“変化”

④至極納得のいく提案

以前は加圧式消火器の安全性を担保する為にと制定されたルールが、マトモに点検をした業者が損をする、言い方を変えると全ての点検業者にウソをつかせるようなものに変わってしまっている為、この機能点検という云わば “名ばかり法令” は無い方がいい!というのが合理的に考えた末に、導き出される結論になるのは自明でしょう。💡
ただ、これまで “コレで安全性を保っていた” という建前に対して何かしら後付けしてやらないと『おいおい、大丈夫か?』という意見も出てくるでしょうから、今後は蓄圧式消火器についてメンテナンスフリーの規格を増やして点検が簡素化されることや、報告書内で従来の加圧式と蓄圧式の点検一覧を別で設ける等の措置が取られる事が望ましいかと。
⑤否決された…!?

ところがどっこい、上記の提案に反対される方がいらっしゃるんです。💔
管理人が現在、耳にしている反対意見は以下の2つです。
- 機能点検が無くなると、消火器の点検自体が無くなってしまう可能性がある。
- 時間がない。
上記について、1. に関しては消火器の外観点検を食い扶持の一つにしている人が困るという事で、2. に関しては何に対して時間がないのかはイマイチよく分かりませんが、要は面倒だという事ではないかと思っています。実にくだらないですね。
⑥すみません論破します

まず、1. の “消火器の点検自体が無くなる可能性” ですが、これは考えにくいですね。
消火器が存在するかどうかも点検の一つですし、外観点検の手間を消防設備士がサービスとして負っていくことに変わりないでしょう。また、比較的少ないですが、例えば大型消火器等の一般的でないものを扱うのはプロの方が無難だという需要は残るかと。
次に、2. の “時間がない” ですが、仰る通り時間がないんです。だから、もっとこれからリソースを割くべき分野に注力できるルールにしなければ。例えば電気自動車の急速充電設備の消防用設備・防災等を最適化していく事は我々も取り組むべき問題の一つでしょう。
⑦個人的な意見

消火器の機能点検については、兼ねてよりずっと思うことがありました。⏰
消防法の第17条の12〔消防設備士の責務〕で “業務を誠実に行い…” と謳われているにも関わらず、事実上は現場の消防設備士や経営者に半ばウソをつかせるような仕組みになっており、真面目に遂行した人が価格競争に負ける…というような市場を作っていると思っています。
どの業界もそのような面があるのだとは思いますが、時代の遷移に伴う環境の変化に対応した、現場の実態に即したルールに基づいて業務を行えればと思います。
⑧個人的な意見 part.2
我々の業務は “加熱試験をすること” ではなく “火災による被害を軽減すること” で、その為に消火・警報・避難設備などを建物に防火対象物に設置、点検しているわけです。

まとめ
- 消火器の “機能点検” に際して分解を要する蓄圧式は空気を再充填しなければならず、現地での作業が困難な為、点検費が高額になり新品と取り換えた方が割安になるという事態が発生しているのが業界の現状であり、今回その法改正をパブコメで提案しようという動きが業界中で広がっていた。✅
- 従来の主流であった加圧式から、皆様ご存知の通り現在は噴射時に急激な容器内圧力上昇を伴わない比較的安全な蓄圧式の消火器へと変更に伴い、点検・メンテナンスを行う現場の環境が変わっている為、現行のルールでは不適切な部分があった。✅
- 全ての点検業者にウソをつかせるようなものになってしまっている為、この機能点検という云わば “名ばかり法令” は無い方がいい!というのが合理的に考えて導き出される結論であるので、声をあげていた。✅
コメントをお書きください
question (金曜日, 26 7月 2019 15:52)
代弁してくださって本当に有難いです。
今までを否定はできないですからメンテナンスフリーの規格が出るのがいいですね。
カルミエには期待していたのですが^^;
管理人 (土曜日, 27 7月 2019 10:58)
>questionさん
コメントありがとうございます!!
誰も指摘したがらないアンタッチャブルなルールでしたが、現場側にウソをつかせる仕組みが日本のものづくり等も軒並み不正行為などのアカン事をさせる温床になってしまっていると思いますので、僭越ながら意見させて頂きました。
また近いうちにカルミエの様な変革をもたらす製品がしっかり登場してくるのかなと思っています。
早く、メンテナンスフリーを“謳って”ほしいです。
今後とも宜しくお願い致します!!�
ぽん (火曜日, 13 8月 2019 10:50)
消火器の機能点検についてですが、私の住む富山県のシールには機器点検しかかいてありません。薬剤充填の場合は各社各々で充填済みのシールを貼り付けております。
蓄圧式の消火器の場合は製造年より丸5年超過(6年目)より機能点検の対象となりますが、以後5年以内に全数の機能点検を終えるようにとなっております。実際には11年経過で耐圧試験をされるお客様は居られないので、11年目には新規更新となってしまいます。したがって、外観検査ではねられなかった消火器は一度も機能検査を受けることなく廃棄されるようになっています。消防もそれで通っていますので、わざわざ中の窒素ガスを抜いてまた再充填すると、圧抜けの原因を作っていることにもなるかと思いますがどうなんでしょうかね?
管理人 (火曜日, 13 8月 2019 13:13)
>ぽん様
コメントありがとうございます!
薬剤充填、の箇所ですが大阪でも全然使われていないと思います。
もし、本体容器の寿命がまだ長く誤噴射等が起こった為、詰め替えたというケースであれば大阪でも例えば弊社であれば消組(大阪消防設備協同組合)で昔買わされたゴホンゴホン…シールを貼っています。
そして、富山県さんの仕組み‥言葉巧みですね!
要は5年以内に “全数” ということは11年目まで機能点検の本数が0本でも問題ないという解釈で宜しかったでしょうか。
実質、日本全国どこでも10年経過で本体容器の水圧試験が…のタイミングで蓄圧式消火器の交換がされている(推奨)でしょうから、言葉巧みでも何でも構いませんから胸張って堂々とルール守ってますと言える様に整えられればと思います。
メンテナンスフリーの製品です、と謳ってくれればそれで済む話なんですが、色々な問題があるようなんです。
今後とも宜しくお願い致します。
馬の骨 (水曜日, 30 10月 2019 21:39)
消火器の機能点検について調べていて、こちらにたどり付きました。消防点検業者のものです。
蓄圧の機能点検について、10年経過で交換もしくは、5年経過で順次交換の方向で業務を行っています。
実質、機能点検はやってないのですが・・・
先日、報告書を提出したときに
消火器の機能点検をやってないことを指摘されまして、
「毎回の点検で、10%交換してます」と答えたところ、
「交換と機能点検は別だ。不備がある報告書は、受理できない」と言われました。
嘘でもいいから、機能点検やってますって書いてほうが楽だなと思いましたよ。
実際の問題として、機能点検と変わりとして全数の10%を交換するのは、合法なのでしょか?