第5 誘導標識


誘導標識の設置は、令第26条第2項第5号並びに規則第28条の2第1項第3号、第2項第2号、第4号及び第3項並びに規則第28条の3第4項第3号の2、第10号及び第5項の規定によるほか、次による。

1 設置場所及び設置方法


(1) 避難口に設ける誘導標識の設置位置は、避難口誘導灯の例によること 

 

(2) 廊下等に設ける誘導標識は、次の箇所に設けること 

  • ア 曲り角のない廊下等の両端に主要な避難口があり、かつ、当該廊下等の歩行距離が15メートルを超えるものにあっては、次式により設置個数を算出し、その設置間隔がおおむね等しくなる箇所。この場合、主要な避難口から最初の位置に設ける誘導標識は、当該避難口からの歩行距離が15メートル以下となる箇所(設置個数が1となる場合は当該廊下等の中央)
誘導標識の設置個数算出式
誘導標識の設置個数算出式
  • イ 曲り角のない廊下等の一端に主要な避難口があり、かつ、当該廊下等が15メートルを超えるものにあっては、当該廊下等の他の一端から歩行距離が7.5メートル以下となる箇所及び当該設置箇所から主要な避難口までの部分については、アの計算式により設置個数を算出し、その設置間隔がおおむね等しくなる箇所
  • ウ 廊下等に曲り角がある場合は、直線部分ごとにアの計算式により設置個数を算出し、その設置間隔がおおむね等しくなる箇所。設置個数を算出する場合の直線部分の長さは、当該廊下等の直線部分ごとに最長の距離をもってその長さとすること(図3-2-12)
廊下等の直線部分の長さの測り方
図3-2-12 廊下等の直線部分の長さの測り方

2 蓄光式誘導標識の性能を保持するために必要な照度等


告示第2号第3第1号(3)及び第3の2第4号に規定する「性能を保持するために必要な照度」とは、停電等により通常の照明が消灯してから次表に定める時間が経過した後の蓄光式誘導標識の表示面においておおむね次表に定める平均輝度が得られる照度とするほか、次による。

性能を保持するために必要な照度 誘導標識
表 誘導標識の性能を保持するために必要な照度

*避難階‥建基令第13条第1号に規定する「避難階」のほか、傾斜地等により地階扱いとなるもので、当該居室から直接地上へ通ずる出入口のある階をいう。 

 

(1) 前表に定める「歩行距離」の測定は、居室の各部分から蓄光式誘導標識を設ける避難口へ至る直線距離ではなく、歩行距離が最も長くなる箇所から居室の壁等に平行又は垂直となる経路の距離とすること 。

 

(2) 光源となる照明器具は通常の使用状態において、調光器等で消灯又は減光させない。

3 通路誘導灯等を補完するために設ける蓄光式誘導標識


告示第2号第3の2の規定により設ける蓄光式誘導標識は、次による。 

 

(1) 告示第2号第3の2第2号に規定する「床面又はその直近の箇所」の直近の箇所とは、蓄光式誘導標識の下端までの高さが床面から1メートル以下の避難上有効な箇所をいうものであること。

 

(2) 階段、傾斜路、段差等のある場所においては、転倒、転落等を防止するため、その始点及び終点となる箇所(床面直近の壁面)に設けること。なお、この場合、蓄光式誘導標識は避難の方向を示すシンボル(告示第2号別図第2に規定するものをいう。)を付置したものとするのが望ましいものであること。

 

(3) 設置環境及び設置場所に応じて、次表に示す耐摩耗性や耐水性等を有するものであること。なお、認定を受けたものにあっては、当該性能を有するものとして取り扱って差し支えないこと。

設置環境及び設置場所に応じた耐摩耗性や耐水性等 誘導標識
表 誘導標識の設置環境及び設置場所に応じた耐摩耗性や耐水性等

(4) 規則第28条の3第4項第3号の2及び第10号の規定により設ける蓄光式誘導標識の設置場所については、1.(2)にかかわらず、告示第2号第3の2の規定によるほか、次によること

  • ア 廊下等に設ける蓄光式誘導標識は、次の箇所に設けること 

(ア) 避難口(規則第28条の3第3項第1号に掲げる避難口)に設置される避難口誘導灯の有効範囲内の箇所(図3-2―13―①) 

 

(イ) 曲り角(図3-2-13-②) 

 

(ウ) 蓄光式誘導標識の有効範囲を7.5メートル以下とし、曲り角に設置した蓄光式誘導標識の有効範囲以外の廊下等の部分を包含する箇所(図3-2-13-③)

通路誘導灯を補完するために設けられる蓄光式誘導標識の設置位置
図3-2-13 通路誘導灯を補完するために設けられる蓄光式誘導標識の設置位置
  • イ ア.(ア)により設置した場合、避難口誘導灯の区分(級)によっては、廊下等の部分が相当長くなることから、当該部分にあっても7.5メートル以下となる箇所に蓄光式誘導標識を設けることが望ましいこと(図3-2-14)
蓄光式誘導標識を設けることが望ましい場合
図3-2-14 蓄光式誘導標識を設けることが望ましい場合
  • ウ 廊下等の曲り角のうち、相反する方向から1の主要な避難口に至る曲り角には、廊下等の床面部分に蓄光式誘導標識を設置すること。ただし、当該曲り角の相対する壁に蓄光式誘導標識を設ける場合はこの限りでない(図3-2-15)
相反する方向から避難できる曲り角に設ける蓄光式誘導標識
図3-2-15 相反する方向から避難できる曲り角に設ける蓄光式誘導標識
  • エ 避難口への経路が2以上ある場所にあっては、当該避難口から最初の位置に設ける蓄光式誘導標識の表示は、原則として、1方向を明示したものとし、その他のものは、2方向を明示したものとすること

4 光を発する帯状の標示等を用いた同等以上の避難安全性能を有する誘導表示


告示第2号第3の2ただし書の規定により設ける光を発する帯状の標示は、次による。

 

(1) 「光を発する帯状の標示」とは次のものをいうものであること 

  • ア 通路の床面や壁面に避難する方向に沿ってライン状に標示を行うもの
  • イ 階段等の踏面において端部の位置を示すように標示を行うもの 

(2) 停電等により通常の照明が消灯してから20分間(規則第28条の2第2項第4号又は第28条の3第4項第10号の規定により非常用の照明装置又は通路誘導灯を補完するものとして設ける場合にあっては60分間)経過した後における当該標示の表面における平均輝度が、おおむね次式により求めた値を目安として確保されるようにすること。なお、次式の「d´」については、通路等の両側に光を発する帯状の標示が設けられている場合であっても、算定上は片側の幅とすること。

L´≧L100/d´ 

L´:当該標示の表面における平均輝度(ミリカンデラ毎平方メートル) 

L´:2(ミリカンデラ毎平方メートル) 

d´:当該標示の幅(ミリメートル) 

 

(3) 円滑な避難誘導灯を確保するため、光を発する帯状の標示に併せ、避難の方向を示す蓄光式誘導標識等を次により設けること

  • ア 設置場所については、廊下及び通路の各部分から1の蓄光式誘導標識等までの歩行距離が5メートル以下となる箇所及び曲り角に設けること
  • イ 7ミリカンデラ毎平方メートル以上の表示面輝度を有すること
  • ウ 標示及び標識の大きさについては、図3-2-16による。
標示及び標識の大きさ
図3-2-16 標示及び標識の大きさ

5 小規模な路面店等(避難が容易な居室)に設ける蓄光式誘導標識


規則第28条の2第1項第3号、第2項第2号及び第3項第3号の規定により設ける蓄光式誘導標識は、次による。 

 

(1) 規則第28条の2第1項第3号イ、第2項第2号イ及び第3項第3号イに規定する「主として当該居室に存する者が利用するもの」とは、当該居室に存する者が避難する際に利用する避難口であること 。

 

(2) 2.(1)により求めた歩行距離が15メートル以上となる場合(蓄光式誘導標識の表示面においておおむね300ミリカンデラ毎平方メートル以上の平均輝度が必要とされる場合)、視認性が確保できるよう、表示面の縦寸法は、次式により求めた値とすること 。

D≦150×h 

D:避難口から当該居室内の最遠の箇所までの歩行距離(メートル) 

h:蓄光式誘導標識の表示面の縦寸法(メートル)

6 大規模・高層の防火対象物等に設ける蓄光式誘導標識


規則第28条の2第2項第4号又は第28条の3第4項第10号の規定により蓄光式誘導標識を階段に設ける場合で、避難時に下り方向で用いられる階段においては、転落、転倒等を防止するため、踏面端部の位置等を示すように、光を発する帯状の標示等を設けるものとする。 

7 特例


次に掲げる部分については、令第32条の規定を適用し誘導標識を設置しないことができる。

 

(1) 避難口誘導灯又は通路誘導灯の設置に関し特例基準を適用できる部分 

 

(2) 次に適合する主要な避難口 

  • ア 廊下等の各部分から容易に見とおし、かつ、識別することができること
  • イ 廊下等の各部分から歩行距離が15m以下であること